Up Previous Next

紳士

場所:パリ

朝7時。朝5時30分の電車に乗って、シャルルドゴール空港に着きました。 そして、またもや、アホ…。Check in の際に、日本(※注1)の免許証を落 としてしまったようなのです。私は、全くそれに気付きませんでした。

※注: 国際免許証の使用時に提示を求められることがあるそうです。が、私の少ない 経験(2度)では、提示を求められたことはありません。

座って日記を付けていると、異様に(?) 紳士然とした人が、自分の手の平と私の 顔を見比べながら、近付いて来ました。疑う必要がない人である(怪しい人では ない)ことは、すぐに分かりましたが、「何だろう?」と私の頭の中には 「」が3つくらい並びま した。

その人が私に、私の免許証を見せた時はビックリしました。私の免許証をどう してこの人が…?一瞬、その人の顔を凝視してしまいました。彼を疑ってしまっ たのです。その人は笑っていました。相手に安心感を与える、素敵な笑顔です。 私は、それまでに「紳士」と呼ばれる種類の人に会ったことがありませんでし た。だから、その人の落ち着いた、そして、存在感のある雰囲気に、めんく らってしまいました。何にも話していなくても、紳士な(?)雰囲気が伝わっ て来るのです。私は、思いました。なるほど、こういう雰囲気が紳士と呼ばれ る結縁なんだなぁって。

私が当惑していると、彼は、口を開きました。「あなたのではないですか?落 ちていましたよ」私は、外国語で感謝の意を伝える方法を知りません。5回く らい「ありがとう」を、できる限り感謝の意を込めて言いました。彼は、相変 わらず笑っていました。そして、「どういたしまして」とだけ言い残して、去っ て行きました。

私は、しばらく自分の免許証と彼の後ろ姿を交互に見つめていました。 そして、思い返しました。彼を疑って、彼の目を見返した時、私の目からは、 攻撃的な意図が見えたはずです。彼は、それをまっすぐ見返して、そして、笑っ ていました。それが自然のように。彼のそういったところにも、改めてびっく りさせられました。私は、一瞬だったけれど、また良い出会いをしたなっと思 いました。


Up: 目次 Previous: マルセイユ Next: パスワード

ackey@hello.to